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1-35 2人の母 1

last update Terakhir Diperbarui: 2025-06-13 20:33:58

 航が美由紀と別れを告げた1時間ほど前――

朱莉は1人でマンションに帰っていた。ダイニングテーブルの椅子に座り、1人でお茶を飲みながら壁に掛けてある時計を見ると、時刻はもうすぐ20時になろうとしている。窓の外では先程から雨が降り始めていた。

「明日香さんと蓮ちゃん……雨なのに大丈夫かな……」

朝、出かけるときは快晴だった。天気予報では雨は21時以降と発表されていたので蓮に傘は持たせていなかった。

「明日香さんに連絡入れてみようかな……」

朱莉がスマホに手を伸ばしかけた時――

――ピンポーン

マンションのインターホンが鳴った。

「蓮ちゃんと明日香さんね!」

朱莉は椅子から立ち上がると急いで玄関へ向かい、ドアアイも確認せずにドアを開けた。

「ただいま、朱莉さん」

そこには蓮をおんぶした明日香が立っていた――

****

「お疲れさまでした、明日香さん」

朱莉はリビングの椅子に座っている明日香にコーヒーを淹れた。

「ありがとう」

明日香は淹れたてのコーヒーに手を伸ばし、フウフウと冷ましながら一口飲んだ。

「まさか蓮が疲れて眠ってしまうとは思わなかったわ。でも考えてみればまだ4歳ですものね」

明日香はリビングのソファの上で肌掛け布団を掛けて眠っている蓮を振り返った。

「そうですね。小さな子供は疲れると眠ってしまいますから。フフ……ご苦労様でした。それでどうでしたか? 今日1日蓮ちゃんと一緒に過ごしてみて」

てっきり朱莉は明日香の口からは疲れたとか、大変だったとの言葉が出てくると思っていたのだが……。

「そうね。悪くは無かったわ……と言うか、楽しかった」

「そうなんですか?」

朱莉は目を見開いた。昔の明日香は子供が嫌いで疲れるような行動を取ることすら嫌っていたのに、今朱莉の目の前にいる明日香は本当に別人のように見えた。

「あら? どうしたの? 朱莉さん。そんな鳩が豆鉄砲を食ったような顔して」

「え? わ、私そんな顔していましたか!?」

朱莉は慌てて両手で頬を抑えた。

「何言ってるの、ほんの冗談よ、冗談」

明日香はクスクスと笑う。

「それにしても明日香さん、蓮ちゃんにお土産まで買ってくれたんですね。ありがとうございます」

眠っている蓮の傍らには大きなペンギンのぬいぐるみが置かれている。

「ええ、蓮がとてもペンギンショーを気に入ってね。ショーが終わった頃には僕、大人になったらペン
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